ブログ

法人活用で究極の節税~不動産所有方式③~

皆さんこんにちは。

大家の右腕税理士事務所 代表税理士 細江博之です。

今回は、法人化の3つの方式の1つ「不動産所有方式」第三弾を解説させて頂きます。

第三弾はどんな物件が不動産管理法人に売却すればいいか?です。

不動産所有方式に向いている物件・向いていない物件

そもそも法人化で何がメリットがあるかというと所得分散移転効果があるということでした。

この所得分散移転効果とは相続税と所得税が節税できる効果でしたね。

では、建物を不動産管理法人(同族法人)に売却(所有権移転)した場合

相続税と所得税はどのように変動するのかというと

まず所得税は家賃収入自体が法人に移転するので、節税になります。

築浅の物件は減価償却費が多く計上されているので所得は低く抑えられています。

なぜ、減価償却費が多く計上されているかというと、新築から15年間は「建物付属設備」「構築物」といった躯体設備の償却があるからです。新築価額の3割程度が躯体設備なので16年目以降の所得がぐっと上がってきます。

また、地代の支払い方によっては逆所得移転効果が発生するので、注意が必要でした。

次に、相続税はどうかというと実は相続税の節税効果が物件によってかなり気をつけないといけません。

相続税の評価減が効いている築浅の物件は不動産管理法人へ売却することによって相続税評価を上げてしまう、逆相続税評価移転効果が生じてしまいます。

具体的には例えば新築の物件で考えて見ましょう。

新築で1億円の物件を建築したとしましょう。

時価1億円の相続税評価は

固定資産税評価6,000万円(時価の6割程度)×借家権割合7割=4,200万円

つまり58%の評価減ができます。

それを不動産管理法人へ売却すると58%の評価減を失ってしまいます。

相続税の評価減を活用したいのであれば、建物の相続税評価額である固定資産税評価額に近づいたタイミングがベストといえます。

売却すべき条件としては

建物簿価(減価償却残高)>残債(借入残高)

建物簿価(減価償却残高)>固都税評価

建物譲渡価格>建物簿価(減価償却残高)

上記の条件が全て揃っている状態が所有方式のベストタイミングです。果物でいうと食べごろの状態です。

一方築浅の物件、特に新築から15年目までの物件は「不動産所有方式」には向かない物件と言えます。不動産所有方式に向いていない物件は「転貸(サブリース)方式」を採用し、所得分散移転させて、上記の三要件が合致したタイミングで建物を売却することが良いでしょう。

不動産所有方式のタイミングに関しては「消費税の課税事業者」か否かも判断材料となってきます。

消費税の免税事業者のタイミングを狙って売却することも考えると、売却する年分を計画的に実行する必要があるので、一筋縄ではいかないです。

税理士もこの当たりのアドバイスを間違うことや、定期的にメンテナンスすること、計画性を持つことがないと、売却金額が大きいため、非常に慎重かつ綿密に実行していただいた方がいいです。

過去に思い込みで間違えて数百万円の無駄な消費税を支払った方がいらっしゃるので、消費税は特に注意が必要です。

消費税に関しては「高額特定資産の取得」や「課税売上割合」「課税・免税」「個別対応方式・一括比例配分方式」など論点が様々です。機会がありましたら、消費税の詳しい解説をさせて頂きますので、そちらをご覧ください。

建物売却にあたっての税金

建物売却にあたり考えなければならないのが、「不動産取得税」と「登録免許税」です。

不動産取得税は、不動産(土地・家屋)を取得したときにかかる税金です。なお、土地・建物等の所有に対しては、固定資産税・都市計画税(市町村税)などが課税されます。(愛知県HP引用)

税額=課税標準額×3%(税率)(※)

※税率は取得の時期により下記のとおり適用されます。

不動産の取得の時期 土  地 住宅用の家屋 住宅用以外の家屋 
 平成20年4月1日から
令和6年3月31日まで
3% 3% 4%

◎課税標準額は、不動産の価格です。

(ただし、軽減措置等がある場合には、軽減措置等による控除後の額になります。)

■不動産の価格とは・・・・・

(1)家屋の新(増・改)築など

  固定資産評価基準により評価した新(増・改)築時の価格(※)

 ※固定資産税の初年度の評価額とは異なります。固定資産税の評価額は再建築価格に経年減点補正率(価値の減少を年単位で率で表したもの)を乗じた額となります。

つまり、売却した建物の固都税の課税標準額×3%が掛かります。

固都税の課税標準額が1億円の場合1億円×3%=300万円かかります。

次に、登録免許税は以下財務省のHPを引用します。

登録免許税の概要

項 目概  要
(1) 課税対象国による登記等(登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定及び技能証明をいう。)
(2) 納税義務者登記等を受ける者(登記等を受ける者が2人以上であるときは、連帯して納付する義務を負う。)
(3) 課税標準登記等の種類ごとに法定(例) 売買による土地の所有権の移転登記:不動産の価額=固定資産税評価額
質権あるいは抵当権の設定登記:債権金額の総額
(4) 税率登記等の種類ごとに法定(定率税率によるものと定額税率によるものとがある。)(例) 土地の登記の場合〔本則〕 〔特例〕1 所有権の保存1,000分の4─※令和5年3月31日までの軽減措置2 売買による所有権の移転1,000分の20→1,000分の15※3 抵当権の設定1,000分の4─

つまり、固都税評価額の2%を支払わなけらばなりません。

固都税の評価額が1億円の場合、1億円×2%=200万円かかります。

ということは、1億円の固都税評価の建物を売却すると余分に500万円の税金が発生するので

流通税(不動産取得税・登録免許税)のコストも考えた上で、建物売却を検討することをお勧めします。因みに税金の他にも借入金の借換を行う場合の繰り上げ返済手数料(ペナルティー)などのコストもかかる可能性があるので、意思決定する際はご自分の判断だけでは難しいので、税理士などのプロに相談することをお勧めします。

まとめ

「不動産所有方式」を採用する場合の物件は築古がいい。特に築年数16年目以上で

建物簿価(減価償却残高)>残債(借入残高)

建物簿価(減価償却残高)>固都税評価

建物譲渡価格>建物簿価(減価償却残高)

上記の3要件をクリアしている物件がベスト。

建物売却する際は流通税(不動産取得税・登録免許税)が発生するので考慮した上で実行しましょう。